親や家族が亡くなったあと、何から始めればよいのか迷う人は少なくありません。葬儀後は気持ちの整理もつかない中で、預貯金や不動産、保険、税金などの手続きに向き合うのは大変ですよね。
相続手続きには、期限が決まっているものもあります。後回しにしていると、相続放棄や税金の申告、実家の名義変更などで不利益が生じる可能性があるため注意が必要です。
この記事では、相続手続きを始める手順や期限がある手続き、家族間のトラブルを防ぐために確認したいことを解説します。

相続が発生して何から手をつければよいかわからない方は、今後の流れを整理する参考にしてください。
相続手続きを始める手順
相続手続きは、やみくもに進めると必要な確認が抜けたり、家族間で認識のズレが生じたりすることがあります。ここでは、相続手続きを始めるときに確認したい基本の流れを解説します。
遺言書があるか確認する
相続手続きを始める際は、まず遺言書があるかを確認しましょう。遺言書の有無によって、財産の分け方や手続きの進め方が変わるためです。
遺言書がある場合は、原則としてその内容に沿って相続手続きを進めます。一方、遺言書がない場合は、相続人同士で話し合い、誰がどの財産を引き継ぐのかを決める必要があります。
たとえば、親が「自宅は長男に相続させる」「預貯金は子どもたちで分ける」といった内容を遺言書に残している場合、その内容を確認せずに遺産分割の話し合いを進めると、あとから手続きのやり直しが必要になることがあります。
遺言書は、自宅の金庫や引き出し、仏壇まわり、貸金庫などに保管されていることがあります。また、公正証書遺言であれば、公証役場で検索可能です。

相続人同士で財産の話を始める前に、まず遺言書の有無を確認しておきましょう!
相続人が誰になるか確認する
次に、相続人が誰になるのかを確認します。相続人を正しく把握しないまま手続きを進めると、遺産分割協議が無効になったり、あとから別の相続人との話し合いが必要になったりすることがあります。
相続人は、配偶者や子ども、親、兄弟姉妹など、家族関係によって変わります。配偶者は常に相続人になりますが、子どもがいる場合、親が相続人になる場合、兄弟姉妹が相続人になる場合など、状況によって組み合わせが異なります。
亡くなった人に配偶者と子どもがいる場合は、配偶者と子どもが相続人になります。子どもがいない場合は、配偶者と親が相続人になることも。さらに、親もすでに亡くなっている場合は、配偶者と兄弟姉妹が相続人になることがあります。

相続人を確認するには、亡くなった人の出生から死亡までの戸籍謄本などを集める必要があります。家族が把握している範囲だけで判断せず、戸籍をもとに正確に確認することが大切です。
預貯金・不動産・保険などの財産を把握する
相続人を確認したら、次に相続財産を把握します。どのような財産があるのかを整理しないと、遺産分割の話し合いや名義変更、税金の判断ができません。
相続財産には、預貯金だけでなく、不動産、株式、投資信託、自動車、生命保険、貴金属などが含まれることがあります。特に実家や土地がある場合は、名義や固定資産税の通知書を確認し、どの不動産が相続対象になるのかを整理しておきましょう。
たとえば、親の通帳を確認すると複数の銀行口座が見つかることがあります。また、固定資産税の納税通知書から、自宅以外に山林や畑、使っていない土地を所有していたことがわかる場合もあります。

通帳、キャッシュカード、郵便物、保険証券、証券会社からの書類、固定資産税の通知書などを確認しましょう!あとから財産が見つかると手続きが複雑になるため、できるだけ早い段階で一覧にまとめておくと安心です。
借金や未払い金がないか確認する
相続では、預貯金や不動産などのプラスの財産だけでなく、借金や未払い金などのマイナスの財産も引き継ぐ可能性があります。そのため、財産を確認するときは、借金がないかも必ず確認しましょう。
借金の有無を確認しないまま相続を進めると、あとから返済義務を負う可能性があります。特に、亡くなった人が住宅ローン、カードローン、事業資金の借入、保証人としての責任などを抱えていた場合は注意が必要です。
通帳の引き落とし履歴にローン返済らしき記録がある、消費者金融やカード会社から郵便物が届いている、税金や公共料金の未払い通知があるといった場合は、内容を確認する必要があります。

借金が多い場合、相続放棄や限定承認を検討することになります。これらには期限があるため、判断を先延ばしにしないことが大切です。財産を確認する際は、プラスの財産だけを見ず、借入や未払い金もあわせて整理しましょう。
必要書類を集め始める
相続手続きを進めるには、さまざまな書類が必要になります。手続きごとに書類を集め直すと時間がかかるため、早めに準備を始めておくとスムーズです。
主に必要になるのは、亡くなった人の戸籍謄本、除籍謄本、住民票の除票、相続人の戸籍謄本、印鑑証明書、本人確認書類などです。不動産がある場合は、登記事項証明書や固定資産評価証明書が必要になることもあります。
銀行口座の解約や名義変更、不動産の相続登記、保険金の請求などでは、それぞれ提出書類が求められます。手続き先によって必要書類は異なりますが、戸籍関係の書類は多くの場面で使うため、早めに集めておくと手続きの停滞を防げます。

書類集めは、相続手続きの中でも時間がかかりやすい作業です。特に本籍地が遠方にある場合や、転籍を繰り返している場合は、複数の自治体から戸籍を取り寄せる必要があります。手続きを円滑に進めるためにも、書類は早い段階から準備を始めましょう。
相続手続きの期限一覧
相続手続きは、期限があるものから優先して進めることが大切です。期限を過ぎると、借金を相続する可能性が高まったり、税金の加算や登記の過料につながったりする場合があります。各手続きの期限を確認していきましょう。
3か月以内|相続放棄・限定承認の判断
3か月以内に相続放棄や限定承認をするかを判断する必要があります。
相続放棄とは、亡くなった人の財産や借金を一切引き継がない手続きです。一方、限定承認は、相続で得た財産の範囲内で借金などを負担する方法です。どちらも、原則として「自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内」に判断する必要があります。
親に預貯金より多い借金がある可能性がある場合、何も確認せずに手続きを進めると、借金まで引き継ぐことになりかねません。通帳の引き落とし履歴、借入先からの郵便物、税金や公共料金の未払い通知などを早めに確認しておきましょう。

3か月は長いようで、財産や借金を調べているとすぐに過ぎてしまいます。判断に迷う場合は、期限が来る前に家庭裁判所や専門家へ相談することが大切です。
4か月以内|準確定申告
亡くなった人に確定申告が必要だった場合は、4か月以内に準確定申告を行います。準確定申告とは、亡くなった人のその年の所得について、相続人が代わりに行う確定申告のことです。
準確定申告の期限は、原則として「相続の開始があったことを知った日の翌日から4か月以内」です。国税庁も、亡くなった人が確定申告をしなければならない場合には、相続人が期限内に申告する必要があると案内しています。
たとえば、亡くなった人が
・個人事業主
・不動産収入がある
・年金収入が一定額を超えている
・医療費控除などで還付を受ける
このような場合は、準確定申告が必要です。

必要かどうかの判断に時間がかかることもあるため、亡くなった人の収入状況や過去の確定申告書、源泉徴収票、医療費の領収書などを早めに確認しておきましょう。
10か月以内|相続税の申告・納付
10か月以内に相続税の申告と納付を行う必要があります。期限を過ぎると、延滞税や加算税が発生するため注意してください。
預貯金や不動産、有価証券、生命保険金などを合計した正味の遺産額が相続税の基礎控除額を超える場合は、相続税の申告・納付が必要です。一方、基礎控除額以内であれば、原則として申告も納税も不要です。ただし、小規模宅地等の特例や配偶者の税額軽減などを使って相続税が0円になる場合は、申告が必要になるため注意しましょう。

相続税は、財産の評価や遺産分割の内容によって申告内容が変わります。10か月という期限はあるものの、相続人同士の話し合いや書類集めに時間がかかることも少なくありません。相続税がかかる可能性がある場合は、早い段階で税理士などに相談すると安心です。
3年以内|相続登記
相続した財産に土地や建物がある場合は、3年以内に相続登記を行う必要があります。相続登記とは、不動産の名義を亡くなった人から相続人へ変更する手続きです。
相続登記は、2024年4月1日から義務化されました。不動産を相続で取得したことを知った日から3年以内に申請する必要があり、正当な理由なく申請しない場合は、10万円以下の過料が科される可能性があります。
親の実家や土地を相続したものの、誰も住まないまま名義変更をせずに放置していると、将来売却や解体をしたいときに手続きが進めにくくなることがあります。兄弟姉妹で共有する場合も、名義や持分をあいまいにしておくと、後のトラブルにつながりやすくなることも。

実家や土地がある場合は、相続登記を単なる名義変更と考えず、今後その不動産をどうするかを考えるきっかけにしましょう。住むのか、売るのか、貸すのか、管理するのかを家族で話し合いながら進めることが大切です。
期限がない手続き
相続手続きの中には、法律上の明確な期限がないものもあります。とはいえ、期限がないからといって後回しにしすぎると、生活や財産管理に支障が出ることがあります。たとえば、
・銀行口座の解約や名義変更
・公共料金の契約変更
・生命保険金の請求
・車の名義変更
・クレジットカードの解約
・携帯電話やインターネット契約の整理
これらは、状況に応じて早めに進めたい手続きです。
特に、亡くなった人の銀行口座は、金融機関が死亡の事実を把握すると凍結されることがあります。凍結後は、相続人の一人が自由に引き出すことはできず、所定の相続手続きが必要になります。葬儀費用や実家の管理費をどこから支払うかも含めて、早めに確認しておくと安心です。

期限がない手続きは、緊急度が低く見えますが、放置すると家族の負担が増える原因に。期限がある手続きを優先しつつ、生活に関わる契約や財産の名義変更も一覧にして、順番に進めていきましょう。
トラブルをなくすために確認すべきこと
トラブル防止のためには、手続きを期限に間に合わせるだけでなく、相続人同士の認識をそろえて進めることが大切です。ここでは、相続手続きを安心して進めるために確認しておきたいポイントを解説します。
相続人同士で情報を共有しておく
相続手続きを進めるときは、相続人同士で情報を共有しておきましょう。特定の人だけが財産や手続きの状況を把握していると、他の相続人が不信感を持ちやすくなるためです。
長男や長女が代表して親の通帳や不動産の書類を確認するケースはよくあります。しかし、確認した内容を他の兄弟姉妹に伝えないまま話を進めると、「財産を隠しているのではないか」「勝手に決められているのではないか」と受け取られることも。
・預貯金の残高
・不動産の有無
・保険金
・借金や未払い金
・必要な手続きの進み具合
などを一覧や手続きの状況を簡単にまとめておくと、話し合いが進めやすくなります。

相続はお金や不動産が関わるため、家族間でも誤解が生まれやすいものです。早い段階から情報を共有し、相続人全員が同じ状況を把握できるようにしておきましょう。
遺産分割協議は書面で残す
遺産分割の内容が決まったら、口約束で終わらせず、書面で残すことが重要です。あとから言った・言わないのトラブルを防ぎ、預貯金の解約や不動産の名義変更などの手続きにも使えます。
遺産分割協議とは、相続人全員で「誰がどの財産を相続するか」を話し合って決めることです。遺言書がない場合や、遺言書に書かれていない財産がある場合には、相続人同士で遺産分割協議を行うことになります。
たとえば、「実家は長男が相続する」「預貯金は兄弟で分ける」「車は売却して現金で分ける」と決めた場合、その内容を遺産分割協議書として残します。相続人全員が署名し、実印を押すことで、合意内容を明確にできます。

書面に残しておかないと、後から考えが変わった人が出たり、相続人の家族から異議が出たりすることがあります。円満に話し合いが終わった場合でも、将来のトラブルを防ぐために、合意内容は必ず形にしておきましょう。
実家や土地がある場合は管理・売却も考える
相続財産に実家や土地がある場合は、名義変更だけでなく、その後の管理や売却も考えておく必要があります。不動産は現金と違って簡単に分けられず、放置すると管理負担や費用が発生するため、早めに対応を考えましょう。
地方の実家を相続しても、相続人全員が別の地域に住んでいる場合、誰が草刈りや換気、修繕、固定資産税の支払いを担うのかが問題になります。空き家のまま放置すると、建物の劣化や近隣トラブル、防犯面の不安につながることもあります。
また、兄弟姉妹で共有名義にすると、売却や賃貸、解体をする際に全員の同意が必要になるため、後から動きにくくなる場合があります。今は問題がなくても、相続人が亡くなって次の世代に権利が移ると、関係者が増えてさらに話し合いが難しくなるでしょう。

実家や土地を相続する場合は、誰が引き継ぐのかだけでなく、住むのか、売るのか、貸すのか、管理し続けるのかまで話し合っておきましょう。相続手続きの段階で方向性を決めておくと、将来の負担を減らしやすくなります。
相続した実家に住む予定がなく、売却や賃貸を検討したい場合は、空き家バンクを活用する方法もあります。地方の空き家を売る・貸す選択肢については、「地方の空き家を売りたい・貸したい人へ|空き家バンクの仕組みと登録前の注意点」の記事で詳しく解説しています。
不安な場合は早めに専門家へ相談する
相続手続きに不安がある場合は、早めに専門家へ相談しましょう。相続は期限や書類が多く、財産の内容によって必要な対応が変わるため、自分たちだけで判断すると見落としが起きることがあります。
相続税がかかる可能性がある場合は税理士、不動産の名義変更は司法書士、相続人同士で揉めている場合は弁護士に相談するのが一般的です。借金があるかもしれない場合や、相続放棄を検討している場合も、期限があるため早めの相談が必要です。
「まだ大きなトラブルになっていないから大丈夫」と思っていても、手続きが進むにつれて意見が分かれることがあります。実家の売却、共有名義、財産の分け方、借金の扱いなどは、後から問題になりやすい部分です。

専門家に相談することで、必要な手続きや期限、書類のそろえ方を確認できます。判断に迷う場面では早めに相談し、手続きの方向性を整理しておくと安心です。
まとめ|期限があるものから優先して進めよう
相続手続きは突然向き合うことになるうえ、確認することも多いため、完璧に進めようとすると負担が大きくなります。まずは落ち着いて、期限がある手続きと、早めに確認すべきことを分けて考えましょう。
大切なのは、手続きを一人で抱え込まないことです。相続人同士で情報を共有し、財産や実家の扱いについて早い段階から話し合っておくと、後のトラブルを防ぎやすくなります。
まずは、手元にある通帳、保険証券、固定資産税の通知書、郵便物などを確認し、財産や契約の状況を簡単に書き出すところから始めてみましょう。そのうえで、相続放棄や税金、不動産の名義変更など、期限が関わる手続きを優先して進めていくことが大切です。

不安がある場合は、早めに専門家へ相談するのも一つの方法です。相続手続きは、順番を整理すれば少しずつ進められます。焦らず、必要な確認から一つずつ進めていきましょう。